「二人の所持金をいっしょにして、ようやくギョーザご飯の大盛り一人前というときだって、何度もあったからな」「二人で一人前なの?」節子がきいた。グラスの水を飲みほして、沖田がうなずいた。「そう」「どうやって食べるの?」「分けあってさ」「やっぱり仲がいいのよ」「ジャンケンして分けるんだ」沖田が言った。「ジャンケン?」「勝ったほうがギョーザを食べて、負けたほうがご飯を食べる」平野の説明に、節子は笑った。「そんなことしてたの?」「ギョーザの皮だけでもいいから食わせてくれと頼むと、こいつはこんな小さなかけらをよこすんだ」「ジャンケンに負けて、ご飯だけになったら、相手がギョーザを食べ終るまで、じっと待つんだ」「なあぜ?」「ラー油を溶かしたショウ油の残りをもらって、ご飯にかけて食べるためさ。ギョーザの香りがするよ」~『ときには星の下で眠る』より~・・・「あれえ、あのジャンケンと餃子の話ってなんだっけ?」「・・・・」「え、覚えてない?」なんていう、過日の会話があって、『ときには星の下で眠る』を書棚の奥から引っ張り出して、読み返した。「けっこう片岡の著作って、餃子というか、餃子ライスが登場するんだよ。彼ってきっと餃子好きなんだよね」なんて、事の顛末で・・・、なんだか無性に餃子が食いたくなって、餃子を焼いた。ついでに、オートバイにも乗りたくなって(本当はWに乗り出すのがいいのだろうが、始動にも時間がかかるし、車検も切れてるので)、Zを引っ張り出して(バッテリーをストックの新品に換装する手間は費やしたが)、散り際の花見がてらに、2時間ほど近所を一回り。REVがカムに乗ったときの、DOHCインラインフォアのヘッドが共鳴する「ウィー♫」という、ハミング・・・、ああ気持ちいい。いったん帰宅して、”その気”になったついでに、10Rにも乗ろうと走り出したが・・・・これは、いけない。どう乗ったらいいのかわからない。微かなスロットルの開け締めで、バイクがギクシャクする。
思った通りのラインに乗れない。初心者かリターンみたいで、ヒヤヒヤする。ジムカーナみたいなタイトコーナーから、高速ベントまで走り回って、1時間近く、あれこれ、考えて、ようやく身体が動き出す。「どっかり」乗ってるんじゃなくて、シートになんか座らずに、前後左右に身体を動かして、ようやくバイクは思ったように動きだした。帰宅して、なんだが「無事に帰れた」と安堵して・・・・・・ふと思う。限定解除世代の罪業なのか、「殿様乗り」とか「白バイスタイル」ってのがやっぱ、一番自然でシックリくるんだよね。Zにせよ、Wにせよ、XSにせよ、CBにせよ、基本的にリアだけに乗って、フロントはオマケの舵切りみたいなバイク。こういうスタイルのバイクは、どんなに長く乗らずにいたって、一度乗り出したら、なんにも抵抗のない、リラックスしたポジションで、思い通りにバイクを動かせる。まあ、オフ車ってのも、飛んだり跳ねたりあるが、基本的には、このスタイルだよな。というより、変にフロントに荷重がかかると痛い思いをする。一方、セパハンのレーサーだとか、そうでなくても、フロント荷重の大きい最近のバイクってのは、やっぱサーキットにいるつもりで、積極的に自分であっちこっち、車体の上で動き回らないと、低速ではバイクのセルフステアも邪魔しちゃうし、高速でも、思いどおりのラインに車を乗せられない。・・・あれ、なにが言いたかったのかわからなくなったが・・・要するに、やっぱりZはいい。10Rで旅にでたら、2時間で飽きるだろうが、ZやXSなら、きっと未舗装の林道だって楽しいんだろう。もう10年くらい前になるだろうか、XS650で白神ラインを駆け抜けたことがあった。あれは爽快だったなあ・・・。サイレンサーのステーがモゲたけど・・・https://fb.watch/4HXV4WPMRq/






