今度こそ、夏の終わりに・・・
季節は変わりつつあるのに、夏を手放せずにいた。
思えば、少年の頃なんて、訪れるものを受け入れることに精一杯だったから、そんなミミッチイ感慨なんて、これっぽっちも抱かなかった。
過ぎ去るものに惜しみや哀しみを憶えるなんて、自分が老いつつあり、あるいは年老いたということの証左なのだろう。
これが正しさだと言わんばかりのしたり顔で、世に憤りを感じ、意見を持つ。それとも、自分の中に潜む醜さをソコラの誰かさんにオシキせて忌み嫌う。猿芝居の毎日なんて、もうウンザリだ。
とどのつまり、僕の知らないところで、僕と僕が大切だと思うモノ以外、世界の全てが死に絶えたって、些かも関係ない。自分の手に触れ、温もりや冷たさを感じさせてくれるモノだけが僕の世界の全てだし、ソコの外には明日も昨日も未来も歴史もない。なにもかも、タチの悪い冗句か、SFみたいな絵空事にすぎない。
そうだ、これでいい。確かに夏は行った。
明日から僕が何処へ向かうにしても、それはもう、秋の旅なのだ。
そうだ、それでいい。